『Black Lives Matter』(以下、BLM)の運動をきっかけに、改めて動詞としての「matter」のニュアンスについて紹介してみようと思いました。
BLMに限らず、このmatterの動詞の使い方は日常会話で非常に頻繁に出てくるので、理解しておくと役に立つと思います。
辞書でmatterを引いてみると
まず普通の辞書を見てみると大体メインは名詞で、以下のような感じです
(名)問題、事柄、物質
名詞としてのmatterは、日本語で言う「物」や「事」のような感じで、使われ方によって色々な意味があります。
今回は動詞として使われる場合の話なので、さらっと紹介しておきますが
・as a matter of fact, ~
⇒「実際のところ、」直訳すると「実際の事として」
・What's the matter?
⇒「どうしたの?」直訳すると「何が問題なの?」
・to make matters worse
⇒「さらに悪いことには」直訳すると「物事をより悪くすることには」
こんな感じで、まさに日本語の「物」「事」のような感じですね。
動詞としてのmatterの意味
では動詞ではどうなるかですね。
辞書では以下のような感じ。
(動)問題となる、重要である
これだけだとイメージがつかめないかもしれないので、実際によく使われる文で見てみましょう。
・It deosn't matter.(doesn't matterだけでも使う)
⇒「かまわないよ」「関係ないよ」「問題じゃないよ」など
・What matters is ~.
⇒「大事なのは~だ。」
・Does it matter?
⇒「それ関係あるの?」
というような感じですね。一番上のような否定文で使われることが多いという感じがします。
Black Lives Matterの意味を日本語で考える
ここで、BLMの訳を考えてみると、さっきの例文に当てはめれば、「黒人の命が重要だ」ということになるのは分かりますね。
これ自体は訳としてはもちろん合っていますし、意味としても通じるのですが、なんかしっくりこないというか、現地の「Black Lives Matter」の気持ちを表しきれてないような気分でもやもやしていました。
北村一真先生の訳ですっきりした
それをどのように紹介しようか、と考えていた時に、たまたまtwitterで、「英文解体新書」で有名なMr.BIGこと北村一真先生が、次のように書かれていました。
むしろ、doesn't matterじゃない、ということなんだと考えて、「どうでもよくなんかない」などと訳したほうが近いのかな、なんて感じました😇
— MR. BIG (@Kazuma_Kitamura) 2020年6月15日
このツイートは何個か続いているものなので是非読んでみてほしいのですが、簡単にいうと、
動詞のmatterは否定的に使われることが多いので、日本語で言うなら「doesn't matter」の方を軸に「どうでもいい」という意味だと考えて、逆に肯定文のmatterは、「どうでもよくなんかない」と訳してみたらどうか
という感じですね。これは本当にスッキリしました。
たしかに、matterは先ほどの例文でもある通り、doesn't matterの形で使うことは非常に多いですので、黒人の命が「どうでもいいもの」と扱われてしまっているのではないか、という現状に対する主張として、「Black Lives Matter」という表現の意図が合うように感じます。
直訳で、「黒人の命が大事である」というよりも、複雑な気持ちが伝わりそうな気がしますね。
ちなみに北村先生の著書「英文解体新書」は以下の記事で紹介していますのでよろしければこちらもどうぞ。
動詞のmatterはよく使われる
今回はBLMの運動をきっかけに考えてみましたが、これにかぎらずmatterという動詞は非常に良く使われます。
これは普段からよく言っているのですが、このような時事内容をきっかけに考えると、言葉の背景や意味なども深く考えることができますね。
是非これを機に皆さんも動詞のmatterを使ってみてください!