こんにちは。
英語が好きな人からすると、翻訳家というのは一つの選択肢として思い浮かぶのではないでしょうか。
しかし、
「そもそも翻訳だけで食べていくのは可能なの?」
「やるとしてもどれぐらいのペースでやればいいの?」
「報酬はどうやって決まるの?」
というような疑問も出てきますよね。
そこで今回は、主に学生さんなどの翻訳未経験者で翻訳に興味がある人に向けて、ざっくりとした産業翻訳のお金の仕組みについてご紹介します。
※あくまで専業ではない自分の経験や、専業の知り合いの情報を基にしているので、他の翻訳家の方で「全然違う!」という方がいらっしゃったらすみません!
フリーランス翻訳だけで食べていけるか
結論から言うと、トライアル(翻訳会社の試験)に合格することができて、一定の時間を確保できれば、2019年現在でもフリーランス翻訳で食べていくことは可能です。
それが満足出来る収入かどうか、家族を養う必要があるか、などなどが人によって違いますので一概には言えませんが、一人なら生活をすることは可能という感じですかね。
ただ、単価は徐々に低下しているため、これから参入するべきかどうかは難しい所ですね。
では、具体的な金額を計算してみましょう。
基本的に収入は単価×作業量で決まる
フリーランス翻訳の報酬は、「単価×作業量」で決まります。
単価というのは、英→日の場合は原文の英語1単語あたりの金額で、日→英の場合は原文の日本語1文字あたりの金額です。
それに作業量(英→日なら単語数、日→英なら文字数)を掛けた額が報酬ですね。
I have a pen.
を
私はペンを持っています。
と翻訳者が訳すと、単価が「10円/ワード」なら40円貰えるという具合です。
単価はどれぐらい?
これは翻訳会社にもよりますし、翻訳者の経験や評価にもよりますが、最近の話では、一般的な産業翻訳なら大体「7円台/ワード」ぐらいからスタートすることが多いようです。
特許などの単価が高い分野であれば、「10円/ワード」ぐらいから始まることもあるようですね。ただし、特許は経験者でなければなかなか参入できないというのも言えます。
そしてその状態で、一定の業務を問題ない水準でクリアしていくと、0.1円単位で少しずつ上がり、最大で数円程度上げてくれることもあるという感じです。
どのぐらいの作業量がこなせるか
単価については先ほどの通りですね。
取り敢えずスタートとして7円として考えましょう。次は、どれぐらいの量がこなせるかになります。
基本的にプロの翻訳者に依頼が来るような文書は、かなり専門的なものばかりなので、結構時間が掛かります。
使用するソフトや文書の内容によりますが、大体初心者の場合は「150ワード/時間」ぐらいになるかと思います。
そうすると時間換算は単純計算で「7円×150ワード=1,050円」になります。あとはどれだけ作業をする時間を確保するかという感じです。
実際どれぐらいの収入になるか
1日8時間で、月に20日稼働であれば、1,050円×160時間で168,000円です。田舎で一人ならなんとか生きていけるかなという感じですかね。(金銭感覚は人によりますが)
フリーランスはどこでも仕事ができるので、それこそ今はやりの「ポツンと一軒家」みたいなところであれば、余裕かもしれません。
ちょっと大変ですが1日10時間で22日稼働なら231,000円なので、これなら会社員スタート時点ぐらいの収入にはなります。(ただしフリーランスにはボーナスは無いので注意!)
実際には、書類の整理や税金関係の処理やエージェントへの連絡などでも時間を取られるという点は要注意です。
収入を増やすには?どのぐらいまで狙える?
単価×量で決まるので、どちらかを増やすことになりますね。
まず単価に関しては、経験を積んで「8円台/ワード」になったとすれば、同じ業務でも単純に1割ほど収入が増えます。
量に関しては、慣れてきてスピードが上がってくると、「200ワード/時間」ぐらいは処理できる(もっと速い人もいます)と思います。
これで計算してみると、時給換算で「8円×200ワード=1,600円」なので、1日8時間の20日稼働でも256,000円になりますね。
更に特許などの高単価のトライアルに合格すれば、更に2割増えることになりますし、ソフトウェアをフル活用して速度を上げれば、その分そのまま収入が増えることになります。
専業の知り合いの話では、
・単価10円×220ワード/時間=時給2,200円ぐらい
・1日10時間×22日で月に220時間ぐらい
・2,200円×220時間で月収484,000円ぐらい
これぐらいが「結構稼いでいる人」の計算イメージですかね。
これ以上に稼いでいる人もいるみたいですが、そういう人は会社を通さずに顧客と直接取引をすることで単価を上げたり、相当長期間信頼できる質を保ち続けていて翻訳会社から特に信頼されていたり、という感じなのかなと思います。
今後はAIなどの影響がどれぐらい出てくるかにも注目
コンピューターの発達で、全体の翻訳スピードは上がっていると思います。そしてその反面、単価が下がっているという感じですね。
AIである程度の訳を作成したり、過去の翻訳データをクラウド等で活用しやすくすることで、たとえば1時間に500ワードで訳せるようになったとしたら、おそらく単価は半分以下になると思います。
そうすると、いかにそれらの技術を併用して作業できるかがこれからは重要になってくると予想しています。
現時点ではAIで完全な訳を行うのはまだ厳しいとは思っていますし、むしろ中途半端な機械翻訳を修正していくのは逆に時間が掛かります。そうすると、最初から自分で訳したほうが速かったりもしますので、まだ今は何とも言えない感もあります。
ただ、少なくともこれからの変化はかなり急激になるでしょうから、もし今から参入するという方がいれば、そのような変化についていくことが大事かと思います。